一度殺された人は(死んだことにされた人は)長生きする、と言われている。
お昼時を少しはずして、ボロ自転車を操り、得体の知れない格好の
おじさんのお客さんがいた。
無駄口のきかない、どちらかというと無愛想なお客さんだ。
(胡散臭いやっちゃなーと内心思っていたのだ)
とある病院で偶然そのお客さんに会うことになってしまった。
小生が結石で痛む脇腹をかかえ、レントゲンを撮りに行くと、
なんと技師さんがそのお客さんだった。
むこうも小生の顔を覚えていたらしく
「あれ?蕎麦屋さんだよねぇ。どうしたの?」なんてことがあった。
その技師さん、月に三、四回来てくれていたのに、2,3ヶ月姿を現さなくなった。
そんな折、地方紙の訃報欄に××病院技師○○××というのを発見。
年齢もそんなもんであるし、確か名前も○○さんといったような・・
病院のレントゲン室で会ってからというもの、何となく打ち解けたような
関係になっていたので、「最近は疲れてなんねぇ」なんても聞いていた。
ともかく、その病院の看護婦さんもお客さんにいるので、
今度来店した折には訊ねてみようと思っていた。
ひと月ほど過ぎてから、看護婦さんが来店。
これこれこういう人なんだけれど、やはりそうなんですか?と聞くと
どうも間違いないらしい。
元気でいたのに急に亡くなったらしい。
頑丈そうな体のお客さんだったのだが・・
心の中で、そのお客さんの冥福を祈った。
やっと少しばかり親しくなったのに、こういうこともあるのだな、と。
さらに何ヶ月か過ぎた。
そのお客さん、ひょっこり現れてしまったのだ。
しかも髪の毛を紅く染めてきたものだから、
あの世から迷い出たのかと仰天してしまい、
足があるのか・・と下を見たくらいである。
そのお客さん曰く
「自転車が無くなっちまったもんで、来れなかったんだ」そうである。
彼は間違いなく長生きする。
うちの店では数ヶ月の間、殺されていたのだから。
posted by 山口屋散人 at 22:41|
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