トイチは上という漢字を分解したもので、ハイチも
下の漢字なのだが、これは少々強引で頭を左側に
ひねらねばわからない。
何の隠語かと言うと、上客がトイチ。
反対に困る、歓迎しない、嫌な客がハイチ。
もともとは呉服屋さんの隠語らしいのだが、蕎麦屋の
業界でもまだ生きている所があるらしい。
(多分、福島では死語か、未使用)
蕎麦屋にとってトイチ(上客)とはこういう客である。
「週に三四度、同じ時間帯に来てくれて、だいたい
同じものを注文し、時には他のお客さんを連れて
来てくれるお客様」
高いものを食べてくれるお客さんではないという
ところが他の物販店と違うところか。
ではハイチ(上客の反対語は?)はどんな客か。
混んでいる時に蕎麦が固いの茹で過ぎだのと
クレームをつける客、食べ終わっているのに
なかなか席を立たない客だそうだ。
だそうだ、と他人事に書いたのは種本にそうあるから。
藤村和夫「蕎麦屋のしきたり」(生活人新書)
では我が店の場合はどうか。
トイチはそんなもんかなぁーという感じ。
ハイチは不潔な人、ふんぞり返って威張っている人、
新聞を全部自分の席に持ってくる人、こっちの
都合などおかまいなく呼び付ける人、なかなか
帰らない人、むやみに話しかける人、大声で
聞こえよがしに話す人、あとはオバチャンの集団。
「さて、これからお昼本番!」という時に、
オバチャンの集団に入ってこられると、
「オーマイガット」なのである。